第97回
精密宇宙論の時代が本格的になってきた。最近ではPlanck衛星によるCMB観測によって、標準的な宇宙論モデルで驚くほどうまく宇宙を説明できることが示されたが、ダークマターやダークエネルギーの正体がわからないなど、根源的な謎は残されたままである。現在、大規模な銀河サーベイ観測などが精力的に行われていて、今後は宇宙の3次元構造である大規模構造によって宇宙論を制限する研究が大きく進むであろう。宇宙構造の解析には精密な理論が求められているが、そこには非線形構造形成や赤方偏移空間変形、バイアスなどの微妙な問題が存在し、理論的に明らかにすべき重要な課題も多い。これらの問題にアプローチする一般的な手法として、「統合摂動論」という枠組みを発展させ ている。その概要と、準非線形領域におけるバイアス効果の取扱いに関する比較的最近の進展を中心にお話する。