64th Uchu Forum
空間的に大きく広がった Ly-alpha 輝線ガス雲,いわゆる Ly-alpha Blob (LABs) は, 大執拗銀河の形成・進化初期段階における周辺環境との激しい相互作用の現場である。 この相互作用の相手である周辺環境を観測することで,明るい LABs がどういった環境に 存在するか,相互作用がどれほどの範囲に及んでいるか,等を推定することができる。
我々はこうした既知の大規模な LABs に対して,その環境を定量化するための系統的な観測を, すばる/Suprime-Cam を用いて行った。環境の指標としては Ly-alpha 輝線天体 (LAEs) を 用い,同一の装置で観測した一般天域のデータを基準として銀河密度の測定を行った。 また,より大スケールでの構造形成・銀河形成と関連づけるため,準解析的モデルを用いて Millennium Simulation との比較を行った。
この結果,z~4 電波銀河 (TN J1338-1942) に付随する LAB に関しては, 平均密度の3-4倍に及ぶ密度超過領域に存在することが明らかになった。 この高密度領域は数 Mpc 程度の広がりを持っており,さらに同程度の大きさの持つボイド 領域と隣接していた。これらの特徴は,一般天域には見られないものである。 シミュレーションでもこれほどの密度超過を示す領域は全体の 0.1% (体積比) にも満たない上, 高い密度コントラストを示す領域はさらに少ないことが分かった。 またこの高密度領域では Ly-alpha 光度関数も明るい側が卓越しており, モデルでは想定していない,モードの違う星形成・AGN 等の活動を反映していると考えられる。