18th Uchu Forum
活動銀河核は,10^8太陽質量程の巨大ブラックホール(BH)へのガス降着により, 莫大なエネルギーを放射している。しかし,巨大BHの形成過程や放射の時間変動 の起源など未だ謎である。講演では,以下の最近の成果について紹介したい。 (1) 中間質量ブラックホールは存在するか? 巨大BHと,太陽の10倍程度の質量を持つ恒星質量BHの間のmissing linkとして, 中間質量BH(約1千太陽質量)が,超高光度X線源の中心に存在するのではないかと 近年疑われている。もし本当なら,巨大BHの謎の形成過程を明らかにする鍵とな る。しかし非常に大きい光度は,恒星質量BHへのガス降着率が異常に大きい状態 (超臨界ガス降着現象)でも説明できるかもしれない。我々はこの可能性の真否を 調べるため,Kawaguchi(2003)の超臨界降着円盤モデルを用いて,超高光度X線源 のX線データを詳細に吟味してきた。放射スペクトルの時間変動を用いた,"中間 質量BH+亜臨界降着"モデルと"超臨界降着"モデルの比較結果を紹介する。 (2) 光度時間変動から探るBH周辺のガス降着流 活動銀河核からの可視光-近赤外線光度の時間変動について,理論モデルは1波長 版はあるものの,多波長データと比較できるモデルは存在しなかった。そこで, 「コロナを放射源とするX線が降着円盤を照らし,可視光の時間変動を引き起こ す」と仮定し,多波長変動モデルを構築・計算した。様々なBH質量とガス降着率 について計算したところ,明るい天体ほど波長間時間差が大きいという観測結果 を初めて説明できるモデルであることがわかった。 最後に,巨大BHと銀河の共進化過程解明へ向けた,我々の可視光・電波観測につ いても紹介したい。