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輻 射 輸 送 & 輻 射 流 体 力 学
Radiation Transfer & Radiation Hydrodynamics

宇宙物理学における輻射

 宇宙には様々な階層の構造がある。それは, 恒星-惑星系に始まり,原始星,中性子星,超新星,ブラックホール, 星間雲,星団,銀河中心核,銀河,銀河団,宇宙大規模構造などである。 これらを質量でみると,太陽質量から銀河ではその1011倍, 宇宙大規模構造に至っては1015倍を超える。 このように様々なスケールで天体が存在するが,それらを 支配する基礎物理過程は次の3つに集約することができる。 それは,流体力学過程重力相互作用輻射過程である。 輻射過程は,電波,マイクロ波,赤外線,可視光,紫外線,X線,γ線 などの様々な波長域の輻射と,これらを吸収したり 放射したりする物質との相互作用である。 (素過程としては,自由電子による制動輻射,サイクロトロン輻射, シンクロトロン輻射,トムソン散乱,コンプトン散乱,および原子に 束縛された電子によるレーリー散乱や,許容遷移,禁制遷移による 放射などである。γ線による,電子,陽電子の対生成が重要な 天体現象もある。)これらの輻射過程が本質的な作用して,重力や流体現象と結び付いて出来上がっているのが宇宙の天体である。

 宇宙物理で輻射が重要なもう一つの理由は,天体の観測がそもそも天体からの輻射を見るものであるということである。 この輻射の情報を通して,そこで起こっている物理現象を解明する のである。理論的観点から言えば,輻射場と物質場の相互作用を扱って期待される輻射を計算し,これを観測と突合わせることで理論の正否を診断することができるのである。

 輻射輸送や輻射流体力学は,宇宙物理学で非常に重要でありながらまだあまり試みられていない分野の一つである。 理由は,方程式系や方法論の難しさと計算量の膨大さにあった。しかし, 昨今の計算機の発達によりこれらの障壁は取り除かれつつある。 特に,高次元の輻射流体力学は輻射場の3次元分について完全に並列処理を行なうことが可能であり, 並列型計算機に極めて適している。 我々は,輻射流体力学による宇宙物理学の大きな発展を目指している。